僕の適応障害の記録

適応障害で休職中のアラフォーWebディレクターが復活するまでを綴るブログです。

アントシアン

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友人である岡崎夫妻に誘われて、登山に行ってきた。
心身ともに不安はあったものの、家で引きこもっているんじゃないか?と僕を連れ出してくれようとする友人の厚意なので、ありがたく受けることにした。

 

早朝5時出発。
近所迷惑にならないよう「おはようございます」と小声で挨拶をし、車に乗り込んだ。

 

適応障害になって会社を休み始めて、最初に会ったのもこの岡崎夫妻だった。
元々は同僚の元職場の飲み仲間、つまるところ「友達の友達」という関係から始まった。
何組かの夫婦で定期的に集まり飲み会をしていたが、いつからか家が近所ということと、お互い子供がいないため都合がつきやすいということもあり、僕たち夫婦と岡崎夫妻だけで会う機会が増えた。

 

岡崎夫妻は、二人ともビールが好きだ。
飲みに行っても基本的には最初から最後までビールであり、ビール以外を頼むことはまずない。
先日友人宅でBBQをした時、珍しく奥さんがレモンチューハイを飲み、その後体調が悪くなったことがあった。
奥さんは「原因はアルコール度数が9%であったことだ」と何故か強く言い張っているが、ビール以外のアルコールを飲んだことが原因なのは明らかだ。

 

話をもとに戻す。
今回登る山はこの地方で一番高い山で、山頂付近がちょうど紅葉しているらしい。
紅葉ベストシーズンのため駐車場が早くに埋まってしまうという理由で、早朝5時出発ということになった。
案の定、登山口につながる有料道路は渋滞ができるほどの賑わいで、駐車場も朝の7時にほぼいっぱいになっていた。
常に無計画な僕たちと違い、岡崎夫妻はこのあたり抜かりがない。

 

天気予報は晴れの予報だったが、登山口は真っ白い霧に覆われていた。
「キムタクと中山美穂が出演していた『眠れる森』というドラマに出てくる森みたいだね」と妻が言った。
「あぁ、わかるわかる」と答えたが「眠れる森」の森がどんな感じだったかどうかは、正直覚えていなかった。
ただ、目の前に広がる白い霧に覆われた森は、「眠れる森」というネーミングがぴったりだった。

 

頂上までは約4.6km。所要時間は2時間半程度。尾根伝いの登山道を上り下りしながら進んでいく。
見渡す限り周囲を真っ白の霧に覆われた登山道。
紅葉を楽しむことは疎か、今自分たちが標高の高い場所いることを認識することもできない。
時折、黄色の落ち葉で埋め尽くされた足下を見て、自分たちは山に紅葉を見に来たのだということを思い出す。

 

登山道で人とすれ違う際は、「こんにちは」と挨拶をするのが登山のマナーでありルールだ。
一日で何十人、いや何百人と挨拶をする。
休職してから、家族と病院の先生ぐらいとしかコミュニケーションを取ってなかった僕は、「こんにちは」の一言だけではあるが、たくさんの人とコミュニケーションをとれることが何より楽しかった。
そういえば、今の会社は挨拶をする文化がない。
したい人はする、したくない人はしない。
「個を尊重する」という会社の方針が、マイナスに作用してしまっている結果の一つだと正直思っている。

 

なんとか頂上に到着。
相変わらず周囲は真っ白で何も見えない状態だったが、頂上に到着したという達成感は格別だった。
神社にお参りをしたあと、岩場に腰掛けて買ってきたコンビニ弁当を食べていると、突如、霧が晴れ、視界が開けた。
空に向かって突き出ているような断崖絶壁の頂に、赤・黄・橙の秋の色に染め上げられた木々が力強く立っていた。
まわりの登山客たちが一斉に立ち上がり、「きれいだね!」「見えたね!」と大きな歓声をあげた。
諦めていただけに、霧が晴れた時の喜びや感動は一入だった。

 

今、僕は霧に覆われた日々を過ごしている。
だとしたら、いつかこの霧が晴れたとき、普段の日常がいっそうきれいで美しいものと感じることができるのではないだろうか。

 

「今年は色がいい」

隣に立っていたおじさんが、一眼レフを覗きながらそうつぶやいた。

 

…あ、オチないです。登山だけに。